蒼天のオリオン 01/02/03/04/05/06/07/08/09/10/11/12/13/14/....

プロローグ



「諒ちゃん…冬の空は、どうして星が綺麗に見えるんだろうね」
「知らねぇよ…そんな事」

「ねぇ、諒ちゃん。あの星はなんて言う星? ほら、あの三つ並んでるやつ」
「煩いな…黙ってろよ。もう少しでイキそうなんだから」

「だって…」
「お前が、あんまり煩いからシラケちまったじゃないか、ちっとは気分出せねぇのか」

「だって…」
「あぁ もういい やめた」
「ゴメンネ…諒ちゃん…怒った?」

ごろりと寝転んだ俺に向ける不安そうな顔と真っ蒼な瞳は、どこまでも澄んだ冬の空のようで…。
俺はその瞳に見つめられると、なぜか落ち着かない気分になった。

「お前、なんでやっている最中に喋るわけ? 訳わかんねぇ。そんなに俺とやるのが嫌なのか?」
「そうじゃないよ…ただ…諒ちゃんと、いろんな話したいから…」

「話なんて、いつだって出来るだろう。やっている時ぐらい黙ってろ」
「……。うん…分かった…ゴメンネ…諒ちゃん」

「諒ちゃん…僕達、付き合っているんだよね」
「付き合っている? なんだよ、それ」

「諒ちゃんと僕…恋人同士なんだよね」
「お前、バカか。なんで、俺とお前が恋人同士になんの? そんなんじゃねぇよ…なに勘違いしてんだよ?」

「だって…こんな事できるのは、恋人だからでしょう?」
「やめろ!変なことばっか言うな…男のお前が、恋人なわけあるか」

「じゃぁ…なんで僕を…」
「お前なぁ、男は溜まったら誰とでも出来るんだよ。お前じゃなくたっていいんだぞ、俺は…それよりさっさとイケよ」

「無理だよ…お尻だけじゃイケない…お願い…前も触って」
「じゃぁいい…イクな。俺だけイク」

涙で潤んだ蒼い瞳は真っ青な深い海のようで…俺は、其処で溺れてしまいそうな気がして怖かった。

「諒ちゃん…僕は、諒ちゃんの何? 諒ちゃんは、僕の…なのに…。
僕は、諒ちゃんが大好き…諒ちゃんは? 僕の事…」
「あぁ、お前…うざい!! もう…お前とはやんない」

「諒ちゃん…僕……くんだ。もう……ない」
次の日…俺の前から…聖羅の姿が消えた。


「君のセックスは、只の排泄行為だね。そんな君が、どうして同性を相手にしているのか 理解出来ないよ」

「二度とお前となんかやんない…馬鹿にすんな!」

「お前は、本当に自分勝手な奴だな…人を何だと思っているんだ」

何度も、同じ様な言葉を投げつけられ…それでも男を抱く俺は…男が好きなわけじゃない。
だって、今まで寝た誰をも…好き…だなんて思った事が無いのだから。
それでも懲りずに男を漁るのは…俺はもう一度…あの真蒼な瞳に、辿り着きたいのかも知れない。

「男はね…女と違って 受け入れる器官を持たないのだよ。
それでも無理をして一つになる。本当に好きな人の為にね。
君のように、自分の欲望だけを満たそうとしたら…相手を傷つけるだけじゃないかな。
君を見ていると、元々そういう嗜好の人間ではないように思えるのだがね。
もし、興味半分だったとしたら…後悔するような事になる前に、普通に女性と恋愛をし…結婚した方が良いと思うよ」

俺は、女と寝ても同じような気がする。ただ…女の方が柔らかい…それだけで…何も変わらない。
それでも何故か…女を抱いた時は、一度も文句を言われた事が無い。それなりに奉仕もするし、それを嫌とは思わない。
ただ…自分の中では…なにかが足りない…何かが…そう思ってしまう。だから…結局…今日も男を漁る。

「君には…好きな人がいるんじゃ無いの?
それを認めるのが怖くて、わざと相手を乱暴に扱っている。
大切にするのが怖い…それは自分の気持ちを 認めてしまう様な気がするから」
「俺に…好きな人?」

「そうだよ。だから、認めてあげなさい…自分の心を。誰かを想う気持ちを。
消し去る事が出来ないのなら、認めるしかないのだよ」
「認めても…そいつは、もう…い…な……い」

「そうか…辛いね。でも、君は変われるかもしれないよ。そしてその方が、幸せになれると思うよ」

そう言ってその人は…俺とセックスをする事はせず…自分がセックスしているところを、こっそり俺にみせた。
変な話だが、人の濡れ場を見て欲情するどころか、俺は涙を流してしまった。

あの蒼い瞳が、二度と俺を見つめる事はないだろう。
それでも俺は…今度こそ、聖羅をこんなふうに抱いてやりたい。抱きしめたい…と思った。