02 罰にも勝る君の笑顔に

   −食卓−

「あっ! きったネェな!! 今 こっちにまで飛んできたぞ。
なんだよ、二人して 人の事言えないだろう 」

「ば! バカヤロウ!! な、なんて事いうんだ お前。 ほ、保坂さんが本気にするだろう!」
「だって 本当の事だろう。 キスぐらいしたって気にしないよ、なっ! おっちゃん。
おっちゃんだって してたんだから、そんなの気にしないって言ってるぞ」
真に同意を求められるように言われて
してた…って、自分は男とキスなどした事もないが…それに、何も言っていないのに…
そう思いながらも、保坂はただ曖昧に頷くしか出来なかった。

「保坂さん あの こいつの言う事、真面目にとらなくていいです。 病院が来い、な奴だから。
本気にしていたら、頭痛くなるますから、適当に無視してくれればいいです 」
晃亮が慌てたように、箸を持った手を振りながら言うが、
その口の横に飯粒がくっついているのが なぜか可笑しくて…そして

「なんか ムカつくな…今日の晃ちゃん」
真人が頬を膨らませると、頬の飯粒までが ぷるん と揺れて。
保坂は、思わず笑みがこみあげてくるのを抑えられず くすくすと笑ってしまう。 それから…。

「私は、別に構わないと思うよ。 人が人とする行為に、男も女もないと思うから…。
今は 突然言われたから一寸驚いたけど、
君達が、そういう間柄だと聞いても、それをどうこうとかは思わないよ。 
本当に好きな相手…必要な相手なら、そんな事は問題じゃないと思う。
だから そんなに、私に気を使わなくて良いですよ。
それに 二人共子供みたいに 顔にご飯粒をつけて…
行儀は悪いかもしれないが、こんな食卓も私は嫌いじゃないですよ」

何故そんな事を言ってしまったのか、自分でも信じられなかった。
ただ…二人を見ていると自然にそう思えたのだ。

「……おっちゃん、すげぇ。 普通 嫌な顔するんだよな。
汚いものでも、見るみたいな顔してさ。 でも、俺達そんな関係じゃないから。
俺は、女 駄目だけど 晃ちゃんはノーマルだから…普通。
でも晃ちゃんは こんな俺と普通に付き合ってくれるからさ…つい甘えちゃうけど。
恋愛感情は無しだからさ…俺、晃ちゃんとは、男同士として ずっと付き合っていきたいからさ。
それに…俺は、おっちゃんの事も気に入ったからさ…よろしくな」
そう言って笑う真の顔が、とても晴れやかで、とても可愛い…と保坂は思った。

自分より はるかに年下の若者に、気に入ったと言われたのも初めてで、
正直、戸惑いが無いという訳ではないが、それでも…嬉しいと思った。
だから…
「そ…そうですか? 嬉しいな…君達みたいな若い人と、仲良く出来るなんて
私の方こそ、情けない叔父さんだけど、宜しくおねがいします」  
何の抵抗もなく、そう言えた。

保坂にとって、こんなに楽しい食事は本当に久しぶりな気がした。
以前家族と一緒の時は、それなりに会話もあったが、
それも此処何年かは…必要最低限の会話しかなかったような気がする。
今日のように楽しい…と 美味しい…と 思った事は、忘れてしまう程昔の事のような気がした。

「南くんは、本当に料理が上手なんだね。
このサラダも、とても美味しい…シャリシャリとした食感がいいですね。
蓮は、煮物にするものだとばかり思っていたけど、こういう食べ方もあったんですね」
正直、口の中が痛くて、物を噛むのも辛い。 それでも、なぜか美味しいと思える。
保坂には、その事が不思議な気がした。

「俺、晃ちゃんの作るものなら何だって食べられるよ。 
偏食で、嫌いなものが多かったけどさ、今は嫌いなものが無いくらいなんだ。
晃ちゃんのおかげなんよ。 だから、毎日晃ちゃんとこで、飯喰っているんだ」

「そんな事言って、お前調子がいいぞ…いつもは辛いだの、甘いだのと文句いうくせに。
けどまぁ、飯は楽しく喰えりゃ、何だって美味いと思うもんさ。
保坂さんも、もし良かったら 好きな時に寄ってください。 俺、飯ぐらいなら、いつでも作りますから」
晃亮は保坂に向かい、笑顔でそんな優しい言葉を言った。



  −温もりに涙−

朝昼兼用だったせいか、それとも…昨夜から、ろくに食べていなかったせいか、
はたまた、二人の若者達の食欲に煽られたせいか、しっかりお代わりまでしてしまった自分に驚く。
そして…食後に、真のいれてくれた茶をすすりながら、こんな穏やかな時間もあったのだと、保坂はしみじみ思った。

「おっちゃんはさ、一人だって言ってたけど 家族はいないの?
もしかして 奥さんは死んじゃったの?」 真がなんの躊躇いもなく聞く。

あぁ…この子は、躊躇いもなくそういう事が聞けるのだな…保坂はそう思いながらも、
その問い掛けに、自分の心が波立たないのに気づき、不思議に思った。
そうか…この子には悪意がないから…ただ、疑問を口にしただけだから。
悪意のない心から出る言葉には、邪気は宿らないのかも知れない。
だから…受け取る方も、邪気を宿さなければ傷つくことも無い…そんな気がした。

「真…そういう事は、あんまり聞くもんじゃないよ。 
人には、いろんな事情が有るんだから、時には、人には聞かれたくない事もある。
俺は、お前の事を良く知っているから 何を言われても 気にはならないけど、普通はそうじゃないんだ。
少しは、そのへんのところを考えて、ものを言った方が良いぞ」
晃亮が、やんわりと真をたしなめると、今度は保坂に向かって。

「すみません、こいつ悪気はないんです。 
ただ思った事を、すぐ口にしちゃうんで…気にしないで下さい」
真の代わりのように、詫びの言葉を口にする。
それに促された訳ではないが、保坂は、自分の今を話す事に 躊躇いは無かった。

「大丈夫ですよ、解っていますから…。 それに別に隠す事でもないですから。
私は今、妻から離婚を迫られているんです。
理由は…と、聞いたら、人生をやり直したい…そう言われました。
私は 妻の気持ちが理解できなくて…そうかと言って、離婚に同意する事も出来ず…
その場しのぎのように、別居を提案しました。

家を出た私は、今はアパートで一人暮らしをしています。
今まで、家事などした事も無い私の食事は、外食か買ってきた弁当でしたから、
今日此処で、君達と頂いた食事は本当に美味しくて…温かくて…
あ…あれ? 変ですね…なんで 涙が…・」

温かい…そう思った途端、保坂の目から 勝手に涙が零れ落ちた。
悲しいとか、泣きたいとか…そんな感情があったわけではない。
それなのに…勝手に…本当に、涙が勝手に流れ出す。

「泣くなよ…おっちゃん。
いいじゃん 美味かったならさ。 又、俺等と一緒に、飯喰えば良いって」
真は、保坂にそう言うと、それから晃亮に向かって、
「晃ちゃん。 俺、そろそろバイトだから…ごちそうさんな」  と、言って立ち上がった。
そして、晃亮に片目を瞑ってみせる。 それを見て晃亮は、直ぐに真の真意を理解した。
本当は、今日は真のバイトは休みのはず。 その事を知っていながら…真に合わせるように、
「お、おぉ! じゃな。 真…今夜はおでんにするから…バイトが終わったら、さっさと帰って来いよ」
そう言って、真の気持ちに返事を返した。

どうして 涙が出るのか分からなかった。 泣きたい理由など無いはずなのに、涙が止まらない。
おかげで、世話になった二人を、嫌な気分にさせてしまった。
そう思うと、涙は益々溢れて…俯いたままの、保坂の膝を濡らした。

「保坂さん もう泣かないで…でも…泣きたかったら、
無理に止めなくていいから…気が晴れるまで、泣いて良いですよ」
晃亮はそう言うと、そっと保坂の肩に手を置いた。

大の男が ぽろぽろと涙を流して泣く姿は、余り見られたものではないはずなのに、
晃亮は、保坂は思い切り泣いたほうが良いのでは…そんなふうに思った。
昨夜もそうだった。 声をあげて泣き、そのあと眠ってしまった保坂を、背負って連れ帰ったのも、
晃亮の前で、あまりにも無防備に泣く保坂が、小さな子供のように見えた。

自分より、はるかに年上の保坂が、今まで生きてきた年月の間には、
多分…色々な辛い事、悲しい事が沢山あったのだろう。
それらを全部、自分の中に押し込め…溜めて…生きてきたのだとしたら。
それが何かのきっかけで、溢れ…解き放たれたのだとしたら…泣きたいだけ泣けばいい。
正直、今の保坂は…あまり良い状況にあるとは思えなかった。
だから…せめて 内にあるものを吐き出す事で 新しい明日が見つかれば良い。
晃亮はそんな事を思いながら、ゆっくりと 保坂の背中を擦り続けた。



  −泣かせた責任−

一頻り涙を零すと 保坂は、ぐしゃぐしゃに濡れた顔を、晃亮に向け、
「ごめん…。 また醜態を晒してしまって…自分でも情けないと思います」 
と言って ずるりと鼻水をすすりあげた。

「ほんと…保坂さん、顔中涙と鼻水でぐしゃぐしゃですね。
昨夜もいっぱい泣いたし、今も…そんなに泣いていると、脱水状態になりますよ。
でも…俺の前では我慢しなくてもいいですから…泣きたい時は、いつでも泣いていいです。 
俺 保坂さんの、気が済むまで付き合いますから」
晃亮の言葉に、保坂は又もや目を潤ませると、

「君は…どうして そんなに優しいんですか? 私のような、見ず知らずのオジサンに」
晃亮を見つめ、本当に解らないというように聞く。そんな保坂に、晃亮は、
「さあ…別に優しくはないけど。 でも…多分、最初に保坂さんを泣かしたの、俺だから…。
頭を掻きながら照れくさそうに言うと 保坂は急に真面目な顔で、

「そんな事ないですよ。 責任なんて…君のせいじゃないんだ。
私がどうかしているんです…痛くもないし、悲しくも無い。 でも…温かい。
とても温かくて…優しい。 そう思うと…だから、君は悪くないんだ」
言ってから、保坂は自分の言った言葉が、何だか恥かしくなり 顔を赤らめ俯いてしまった。
それを見つめる晃亮の顔に、なぜか嬉しそうな笑みを浮かび。

「保坂さん 昨夜もあのまま寝ちゃったし その顔を洗うついでに、風呂に入りませんか?
ゆっくり風呂に入って 少し横になったほうがいいですよ。
本当は 身体中痛いんでしょう? あちこち 痣になっていると思いますから、
今日はゆっくり身体を休めて 明日、帰ればいいでしょう?
それに…さっき真にも 今晩はおでんだって言っちゃったし…
三人で、おでんで一杯やりながら…っていうのも、悪くないでしょう?」
そう言うと晃亮は立ち上がり 部屋を出て浴室に向かった。

保坂のワンルームより 少し広いこの部屋は、1LDKと呼ばれるタイプらしく、
保坂の部屋と違って、トイレ、洗面所、バスルームがそれぞれに独立していた。
そして、晃亮が浴槽に湯を入れてくれると、保坂は急き立てられるように、浴室に追いやられた。

確かにひどい有様だと思った。
唇の端が赤黒く腫れ上がり、泣いたせいも手伝って、目が更に浮腫んだようになっている。
腕や脚にも、打ち身らしい青黒いあざが、いくつもできていて、
特にわき腹は 骨折はしていないものの 大きく息をする度に痛んだ。
自分は 本当に暴漢に襲われたのだ…。
保坂はやっと少しだけ、昨夜の恐怖が思い出され、身体が震えてくるのを感じた。

死ぬかもしれない…確か、そう思った。
その時 声が聞こえて…それから…温かいものが、自分に触れてきて。
あぁ…そうか…あれは 南君の手だったんだ。
あの手が、とても温かくて…自分の中で何かが弾けたのを感じた。
俺が…泣かせたんです。 そう言った南君の言葉は、正しかったのだ。

だからと言って やはり南君に責任がある訳ではない。
私は、もう限界に来ていたのだろう。 だから あの手の温もりを感じた時、
私が勝手に…我慢する事を止めたのだ。
でも…だからと言って…どうして、泣くのだろう。 恥かしい…。
湯に浸かりながら 保坂は今更ながら自分の行動に、恥かしさで一人顔を赤くしていた。



   −密かなる本心−

保坂の酒の弱さに、晃亮と真は顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。
コップ三、四杯ほどのビールで すっかり酔っ払い状態の保坂は、 さっきから上機嫌で、
何がそんなに楽しいのか へにゃ〜とした笑顔で 二人を見ては、嬉しそうにうんうんと一人で頷いていた。

「おっちゃん なんか良い事でもあったのか? さっきから、やけに嬉しそうだけど」
そんな真の問い掛けにも 保坂は、ふにゃ〜と笑うと
「わからないよ。 わからないけど…なんだか楽しい」 
と言い、それから晃亮に向かって ねっ! と言った。

保坂に相槌を求められ、晃亮は、ね! の意味も解らないまま、
それでも、コップを手にしたまま 優しげな笑みを浮かべ頷く。
さほど大きいとはいえない保坂が、XLサイズの晃亮のスウェットを着ている姿は、
襟元や袖口から覗く 保坂の首や手首の細さを際立たせ、
晃亮にはそれが華奢で危く思えて、とても自分たちより大分年上とは思えないほど可愛らしく見えた。
そのせいか、保坂を見つめる晃亮の目が、益々細くなり口元から笑みが消えない。
そんな晃亮を見て、真の顔にも笑みが浮かび、

「晃ちゃん…おっちゃんに、何かしたのか?」  と、聞く。
真に言われて一瞬我に返ったように、晃亮が慌てたように大きく頭を振って、
「なんも してないぞ! さっきお前が来る少し前まで、寝てたんだから」
そう言って、違う! という意味の意思表示をする。 すると、保坂も、
「そうだよ、寝てたんだよ。 ずっと寝てた…あちこち痛いし、目も重いからね」
そう言って、また意味もなくふにゃ〜と笑う。 そして…ふと何かを思い出したように、真にむかって言った。

「あれ? 真くん ただいまのキスはしたの?」  その言葉に 真と晃亮がえ?というように顔を見合わせ。 
そして、真が保坂の顔を 覗き込むようにして、笑いながら言う。
「おっちゃん 何言ってんの?」  すると保坂は、意外にもまじめな顔で、
「だって 二人はキスするんでしょう? 良いよ…僕のことは気にしないで、どんどんやって下さい。 
我慢するのははいけないですよ。 我慢していると、変になっちゃうから…僕みたいに」
そう言うと保坂の表情に、今度は少しだけ悲しそうな色が浮かんだ。

「オイ、晃ちゃん。 おっちゃん、かんぺき普通じゃないな…キャラ変わってるぞ」
「どうやら そうみたいだな。 だけど、これが、本当のこの人なのかもな。
それにしても、こんなに酒が弱いのも珍しいよな。 俺、初めて見た」
「そうかも…だな。 そうすると俺たちは、おっちゃんに比べたらザルだな」 
そう言って真は、可笑しそうに笑った。

そんな二人の会話も 耳に入らないのか、保坂はなおも真に向かって。
「ダメだよ…ただいまとお帰りの挨拶は、ちゃんとしなくてはいけないんだよ。
早くしなさい! 僕が、見ててあげるから…ね!」  
そう言って、また ヘニャッと笑った。  
ころころ変わる保坂の様子が、可笑しいやら 可愛いやらで、真がおおげさな程の口調で、

「しゃぁねぇな…。 酔っ払いが相手じゃ、言っても聞かないしするまでしつこいだろう。 
よし! じゃぁ するか〜! おっちゃん ただいま!」
そう言うと身体を少し伸ばし、保坂の頬にチュッとキスをした。
すると保坂は、一瞬目をまるくして…それから 真を指差して、
「間違ってるー」 と言って、ぎゃは・は・は…と笑う。 すると真も笑いながら、晃亮に言った。

「晃ちゃんは、お帰りだぞ」  
真のその言葉に 晃亮も苦笑いを浮かべ、今度は保坂の反対の頬に、チュッとキスをして
「お帰り…」  と言った。
すると保坂が、晃亮の唇が触れた頬を押さえながら、晃亮に向かってなにか言おうとしたが、
言葉は声にならず、その目がまたもや涙でいっぱいになった。

「おっちゃん! 俺だと笑うのに 晃ちゃんだと なんで泣く訳?」
真が、ぶ〜と頬を膨らませ保坂に言うと。
「僕にも 解らないよ。 泣きたい訳じゃないのに、どうしてか勝手に出てくるんだもの」


そんな保坂が、晃亮の膝元でクッションを枕に 軽い寝息を立て始めると、
ふたりは顔を見合わせ、どちらからともなく曖昧な笑みを浮かべた。
「なぁ、晃ちゃん…おっちゃん…どうすんのさ。
晃ちゃんに覚悟がないんだったら、半端な優しさは、おっちゃんにとって良くないぞ」
真が何気ないように言い、半分ほど残っていたグラスの中身を一気にあおる。
その言葉の意味を解っていながら、晃亮は解らない振りで…。

「どういう意味だよ…」
「まんまだよ…。 おっちゃんは まだ自分じゃ気づいてないけどな。
多分、おっちゃんにとって晃ちゃんは、自分が、自然なままでいられるために必要な存在。
特別な存在だって事だよ。 何がきっかけなのか解んないけど…そうなってしまったんだよ。

でも…おっちゃんが、それに気付いてからじゃ、逃げられないよ。
そりゃ、逃げる事は出来るだろうけど…多分、晃ちゃんは逃げないだろうな。
そんな晃ちゃんが 今度はおっちゃんを傷つける…だろう?」

真の言葉に、自分が気付かない振りを決め込んだもの…を、暴かれ、突きつけられた気がした。
ほんと…こいつはいい加減なようでいて、いつだって鋭く核心を突いてくる。
覚悟も無いのに、踏み出してはいけない…そう言って釘をさしているのか。
そんな事を思いながら、自分でも薄々感じている、自分の心に逆らうように、

「この人は今 家族の事でいろいろあったから 少し気が弱っているだけだよ。
別に俺の事、どうとか思っている訳じゃないさ。 それに…俺だって…」
言いながら、自分でもその言葉は、ひどく白々しいもののように聞こえた。

「なら…なんで拾ってきたんだよ。そんなの、いつもの晃ちゃんらしくないだろう」
「泣いたんだ…今みたいに。 俺の手を抱くようにして、温かいって涙を零して泣くんだ。
いい親父がだぜ・。 なんか、それを見たら…可愛いっていうか 、ほっとけないっていうか…。
何なんだろうな…俺にも良く分からないんだ」

「…どっちにしても、よく考えたほうがいいよ。
俺は、おっちゃんの事は好きだけど、俺の好きは、晃ちゃんを好きなのと同じだから問題ないけどさ 、
恋愛の好きは…男同士では、半端ない覚悟がいると思うからさ」

「そうだろうな…判った。
良く考えてみるけど、 この人は明日には帰るだろうから、もうそれでお終いかも知れないし…。
真…ありがとな、心配してくれて」
二人が、そんな会話を交わしている時にも、
保坂は晃亮の膝に頭を寄せるようにして、幸せそうな顔でスースーと寝息をたてていた。




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