指きり (4) 約束の決行



あれほど旅行、旅行と騒いでいながら祖父の墓参りを兼ねたのは、単に経済的理由からなのか、
それとも親孝行?のつもりなのか…透太には窺い知る事は出来なかった。
ただ…理玖の母親の北海道行きと日を空けず、父親の生家である徳島へ発つ前夜。
父親と母親が珍しく深刻な顔で、何やらひそひそと話し合っているのが少しばかり気になった。
それでも朝になるといつもと変わり無い様子で、留守中の事をあれこれと口煩く指示する母親に。
何となくホッとしながら、透太は両親の徳島行きを見送った。

両家の親が揃って留守にするなんて事は今まで一度もなかったが、それが今回どういう訳か重なり。
おかげで、否応なしに理玖と二人で留守番をすることになった透太は、寒いくらいクーラーの効いた理玖の部屋で、
いつもと同じように理玖のベッドに腰掛けた事を少しだけ後悔しながら、半分泣きそうな顔で自分の腕を擦り続けていた。
目の前には、自分の椅子に座って机の上を片付けている、気持ち悪いほど機嫌良さそうな理玖の顔。
その横顔を上目づかいに見ながら、透太は心の中でぶつぶつと不満を垂れ流していた。

【何でこんな事になるんだよ。あんな約束…もう、時効でいいじゃないか。それを理玖の奴…マジ頭おかしいよ。
それにお袋まで理玖に載せられて…少しは息子の気持ちを察してくれても、罰は当たんないぞ】

文句は理玖から母親にまで飛び火する…が。だからといって、既に二人だけになった今の状況が変わるはずもない。
それならどうにかして、理玖の言う初夜の準備とかを中止させる口実は無いかと、いろいろと考えるのだが。
元より頭を動かすより身体を動かす方が得意の透太に、理玖を思い留まらせるだけの良い考えが浮かぶ筈もなく。
クーラーのせいばかりでは無い嘘寒さで、透太はブルッと身震いをした。
するとその様子を目の端に捉えたのか、理玖が身体を椅子ごと透太に向けた。

「少し寒い? クーラー弱めようか?」
聞いたその声も、表情も、自分を見つめる目まで、なぜか今まで知っている理玖とは違うような気がして、
透太は理玖の顔を確かめるように二度ほど瞬きをし…答える声に戸惑いの色を滲ませた。
「う…うん……あっ…でもいい」
だが理玖は透太の心の内に気付かないのか、それとも無視を決め込んでいるのか、今までで一番優しげな声で。
「そう? じゃ、そろそろ始めようか?」 透太にとって最大の危機を告げる言葉を口にした。

「………。なぁ、どうしてもすんのか? やっぱ俺…嫌だ。したくない」
「透ちゃん……今更何言ってんの? だってこれは、指きりまでした約束だよ」
「うぅ…うぅぅぅ…」
「それに…このままで、透ちゃんが童貞を失うか処女を失うかしたら、取り返しがつかなくなるだろう?
きっと僕の事なんか、目もくれなくなるに決まっている。だから…ちゃんと僕のものにして置かないと、心配だからさ?」
まるで、何でも無い事のようにそんな事を言う理玖に、透太は呆れて空いた口も塞がらない。
それでも口を開けたままと言う訳にもいかないと思い直し、代わりに必死の抵抗を口にする。

「お前のものって…お前本気か? 俺は、絶対嫌だ!!」 だが理玖は…透太の拒絶など全く眼中にないという顔で。
「そんな事言って…ほんと透ちゃんは我が侭なんだから。でも、透ちゃんは特別だからね…許してあげる。
良いよ、お嫁さんでも旦那さまでも、透ちゃんの好きな方を選んで。僕はどっちの透ちゃんでも構わないからさ」
益々訳の解らない事を言った。確かに理玖の事は嫌いではないし、どちらかと言うと好きだと思う。
でもそれは、将来お互いに家庭を持ったとしても、ずっと仲良く付き合っていける従兄弟…であって、
それ以外の存在として考えたことも無かった。

それに何より自分たちは男同士なのだから、嫁とか旦那とか…そんな関係になれる訳がない。
透太の頭の中ではそれが正論で、それ以外の選択肢など考えた事も無くて…だから透太は。
「そういう問題じゃないって!!先ず、お前とは従兄弟だし…それに、男同士で嫁とか旦那ってのが変だろう」
理玖の間違いを正そう?とばかりに訴える…のだが、訴えた相手の理玖はといえば。
透太の言っている事が理解出来ない。そんな顔でちょっとだけ首を傾げ、ちょっとだけ間を置いてから。

「なんで? 従兄弟同士だって、男同士だって、好きだったら別にかまわないでしょう?僕、透ちゃんの事大好きだから。
それにさ、透ちゃんの為に一杯勉強もした。本も読んだし、ネットでも調べた。そういう人達の話も聞いた。
だから絶対上手く出来る自信があるんだ。準備万端整っているからさ、透ちゃんは安心して僕に任せていれば良いよ…ね!」
如何にも自信満々といった顔でにっこり笑った。そして透太は、此処まで自分の言葉をスルーされてしまうと、
流石に説得の方法も見当たらず、その代り頭の中では危険信号がフル点滅しだした。

「………。ヤッベー…マジこいつ、やる気満々じゃねぇか。 どうする、どうする…今すぐ逃げ出そうか。
でも…ドアは理玖の後ろだし、絶対掴まっちまう。あああーーーー! もう、どうすれば良いんだーーー!】

透太が真剣に身の危険?を感じて顔を半分引きつらせているに対し、理玖は…といえば。
余裕ともとれる笑顔で机の引き出しを引くと、中から小さな鍵を取り出した。
そしてそれを透太に向かって小さく振って見せ、更に透太を仰天させるような事を言い出した。
「透ちゃんは何も心配しなくて良いよ。必要な物は、僕が準備したからさ。そうだ…透ちゃんも見てみる?」
そう言って、その鍵で机の横にあるキャビネットの引き出しを開けると、幾つかの小さな箱と紙に包まれたものを取り出し。
透太の目の前に広げてくれた……が。

理玖が徐に箱から取り出した物は…透太のなにより遥かに立派でグロテスクな色をした…なに…や。
何の為に使うのか解らない小瓶やらチューブ。挙句に変な紐のついた何だか分からない、でも嫌〜な予感のする物。
そしてその異様に立派な物を、理玖は無造作に掴んで透太の前に突きだした。
「わっ、うわっ!! なんだよこれ!!」
「うん、サイズはちょっと小さめだけど結構リアルだよね。最初から大きいのにして透ちゃんに傷をつけたら大変だからさ。
最初はこれで試して…もっと大きいのが欲しくなったら、その時にまた買ってあげる。いつでも買えるから大丈夫だよ」
透太の目の前でそれを振りながら、恐ろしい事を平気で言う。

【俺に傷…って。 お前…それって、俺に使う気でいるって事じゃないか!
嫌だ〜! そんなものを突っ込まれたら、裂けちゃうだろう! 二度とウ○コも出来なくなっちまう。
だいたいな、なんで自分のチ○ポよりでかいもんを尻に入れなきゃならないんだよ。
嫌だ…ぜってぇ、嫌だ! 死んでも嫌だ!!】
大声で叫びたいのに、自分の…よりでかい…は、口が裂けても言いたくなくて、透太は硬く口を噤んで必死に首を振った。

だが理玖は、そんな透太の心の叫びにも気づかないのか、それともやはりスルー全開なのか、
これ以上ないという優しそうな顔で、持っていた恐ろしい?物を机の上に載せると透太の横に座った。
「大丈夫、最初からこれは無理だから使わないよ。だから…先ずは、試しにキスしてみようか」
【はぁ〜? キス? 冗談じゃない…まだ誰ともした事無いのに、なんで男のお前と。
ファーストキスはやっぱ可愛い女の子と】 と……と…理玖の顔が徐々に近づいて…透太の鼻先で止まった。

【あぁ〜良かった…理玖の奴、やっぱ冗談だったんだ】 ホッとしていると。
「透ちゃん…そんなに目見開いていたら、やはりやり難いよ。
ちょっとは、目を閉じるとか気分出すとかして協力してくれなくちゃ。これは共同作業なんだからね」
気分云々言っている割には色気の無い事を言い。透太は理玖に言われた言葉より、
目の前のドアップの理玖の顔…そっちの方に気を取られていた。そして不覚にも思ってしまう。
【うっすら残った頬の傷を加算しても…理玖って…やっぱりいい顔してんな。女に人気がある訳だ…】

切れ長の綺麗な二重の目をちょっと細めて、透太を見つめる表情が、妙に切なげに見えるのは…気のせい?
額に垂れた色素の薄い髪が柔らかそうで…触れてみたいと思ってしまうのは…気のせい?
頬から顎にかけてのラインが、いつもより男らしくみえるのは…気のせい?
それに…小麦色に焼けた肌に産毛が金色に光って…なんか…なんか…。

「透ちゃん…目…閉じて…」
囁くように言われ…透太はその言葉に誘われるようにゆっくりと目を閉じた。



   初めてなんてこんなもの?


柔らかい。ん…んん……柔らかくて…なんだろうこの感触。なんか…気持ちいいかも…。
触れては離れ…離れては又そっと触れる。それを何度か繰り返され、透太はそれが理玖の唇だと言う事も忘れ、
うっとりと目を閉じていた。そして 「ちょっと、唇開いてみて」 理玖の声で、透太は閉じていた唇を少し割った。
すると…ぺろ…濡れたものが唇の隙間をぬって内側を這うように動き、下唇を食まれ甘噛みされ、
チクンとした痛みに、あっ…思わず声を出したその隙をぬうように、歯の間を割って何かが口の中に入り込んできて。
うっ…う、うう…一瞬仰け反ってそれから逃れようとするが、背に理玖の腕が回り…頭まで押さえられた。

【嫌だ! 理玖とキスなんて…】 そう叫びたいのに、口の中にある理玖の舌に自分の舌が触れると、
くすぐったいような、うずうずするような変な感覚で、なぜか身体の力どんどん抜けていく。
そして、その感覚がとても気持ち良いような気がして…それが理玖の舌だという事も忘れ絡めあう。
「はぅ…ん……んん…」 鼻から息が抜ける毎に甘ったるい声まで抜けて行く。
そのせいで頭の中まで軽くなってしまったのか、やけにぼんやりと霞みがかった頭で…。
【俺…宙に浮いているみたい。なんか、気持ち良くて…ふやけそう…】 そんな事を思っていた。

そして、散々貪られて理玖が出ていった時には、キス初体験でふわふわと漂うクラゲ状態になってしまった透太に。
「透ちゃん感度最高だね。これだったら、すぐにおねだりするようになるかも…だね」
理玖が嬉しそうにそんな事を言い、透太はぼんやりと白んだ頭で…それでもなんとなく考えていた。
【はぁ…理玖は、なにを言っているんだ。けど理玖の奴…今まで誰とキスなんてしていたんだろう。
俺なんかファーストキスだっていうのに。なんか、ムカつく。でも…すっげぇ気持ち良かった。もう一回ぐらいしても】
などなど…と。すると、そういう事だけは感じ取るのか、スルーしないのか。

「透ちゃん…もっとしたいって顔しているよ」 理玖が笑みを浮かべた顔で言った。
確かに、キスしている時は理玖が男だって事も全然気にならなかった。と言うより、そんな事を考える余裕もなくて。
ただ、ふわふわと気持ち良くて、理玖の唇が離れていった時…もう少し…みたいな気がした。
それでも、そんな密かな思いをあからさまに言い当てられると、初キスでへろへろになった自分が恥ずかしくもあり。
同時に、理玖の如何にも経験者顔が…面白くない…気もした。だから、

「……俺…初めてだったんだぞ…」 ふて腐れたように、意味も無くそんな事を言う。
すると理玖が嬉しそうに笑いながら、もう一度透太をきゅっと抱きしめ…耳元で囁いた。
「うん、透ちゃんのファーストキス…いただきだね。お礼に、もっと気持ちいい事してあげる…もう一度目を閉じて」
その言葉は、透太の否定した男同士のキスを選択肢の一つに加えるに充分だったのか、ただもう一度…思っただけなのか。
どちらにしても、答えた透太の声は拗ねているようにも甘えているようにも聞こえた

「また…ベロチューすんのか…」
「ベロチュー?……ああ、ディープキスの事?」
「俺…息が出来なくて…頭の中が真っ白になって…死ぬかと思ったんだぞ」
「でも透ちゃんとのキスはとっても甘くって、僕まで白くなりそうになった。だから…もう一度……ね」
そんな理玖の言葉に、透太はちょっと顔を上にあげると唇を少し開き…目を閉じた。

「ふふ、透ちゃん可愛い…やっぱりお嫁さんにしたいな」
耳元で理玖がクスッと笑い、耳に入り込む理玖の囁く声に引き出された何かが、身体の中を走りぬける。
さっきまでのふわふわした気持ち良さとも違うもっと鋭角的なものが背筋を伝わり脳天まで突きぬけ。
それは、身体の芯から力を抜き取り、自分の身体では無いほどに頼りなく崩れさせる。
「あっ! あぁ…」
思わず出た声がやけに甘ったるく、その声を塞ぐように理玖の腕が透太の腰を引き寄せ…唇が重なった。

理玖の舌に触れると、くすぐったさはびりびりと痺れるような感覚に変わり…だから逃げる。
なのに…逃げても直ぐに追い詰められ、捉えられ…腰から背中を撫でる理玖の手から電流が走った。
それが幾度となく脳天まで貫き…そのうち身体中が痺れて。そして、今度は夢中になって、理玖の舌を追う。
【あぁ…もう、俺…ぐちゃぐちゃ。だめ…理玖…俺、溶けちゃうよ…】

「透ちゃん…倒すよ…」
微かに聞こえた声で、透太の意識は理玖を押しのけようと手を伸ばす。
理玖の声が、吐く息が、手が…自分を侵食し、自分を別の自分に変えていく。そんな気がして、それが怖くて…。
それなのに、押し戻すはずの手は理玖の背中に廻り、しがみつくようにして首がカクカクと頷いた。
理玖の体重が少しだけ重く…でも、その重ささえも気持ち良くて。そして…頭の中で声が聞こえた。
もっと…押しつぶすほどに…強く抱きしめて…。それは自分の意識とは別に身体が望み、身体が発した声。

するとその声が聞こえたかのように、それまで自分の背中にあった理玖の手が、首から肩、そして胸を滑り下腹部へと下がり。
「透ちゃん…此処きつそうだね…」
そう言って透太の中心をズボンの上から撫であげた。物心ついてから自分以外の手が触れた事の無い場所。
其処をズボンの上からとは言え形に添って何度も撫でられ、透太の口からは鼻にかかった甘い声が漏れた。
「あっ…あぁ…ん…」
そして無意識に理玖の手にそれを押し付けるように腰を揺らす。
その様が快感に対し素直と言うか、なんとも可愛いと言うか…理玖が再びクスッと笑い…呟いた。
「やっぱ、お嫁さん決定」

【嫌だ…恥ずかしい。理玖にキスされて勃起しているなんて…俺って変態】
頭の隅に微かに残っている理性で思いながら…その理性は、男がこういう状態になったら、
出してしまうまでずっとウズウズが続く…という過酷な現実も知っていた。それに…目にはっきりと判る。
だから…透太は自分の手を其処に持って行こうとして…届く寸前で理玖にその手を掴まれた。
「あっ、い…いやだ…放せ…」
「だめだよ…それは、僕のする事だからね。大丈夫、透ちゃんは黙って僕に任せていれば良いんだよ」
そう言うと理玖は、透太の手をもう片方の手でやんわりと掴むとズボンのボタンを外し、ファスナーを引き下げた。


その感触だけでも、腰が跳ねた。そのうえにキスをされ…理玖の手が下着の中に滑り込むと、
恥ずかしいとか、嫌だとか…そんなものは何処かに吹き飛んでしまい、自分から腰を浮かせ理玖に協力する。
ただひたすら快楽を追い、自分の中に走る激流を解放する…それだけで頭の中が一杯になった。
【あぁ、なんて気持ちいいんだろう…自分でするのとは段違いだ。それにしても、理玖の奴上手いなぁ。
やんわりと袋を揉まれると、キュって縮むような感じが気持ち良い。あと、先っぽをくりくりされるのもすごく気持ち良い。
やっぱ男だな…力の入れ加減とか、気持ちいい場所とかよく解っている。ニチャニチャとする音が少し恥ずかしいけど…。
もう、このまま溶けちゃっても良いや。理玖が男でも、変態でも何でも…この気持ち良さに返られない】

いつも自分でする時と違って緩やかなようで強烈な快感と、迫上がってくる射精感で…透太は最後の一瞬を待った。
だがその時…始めて感じる手以外の柔らかく濡れたもの…が、今にも爆発しそうな中心に触れた。
そして、えっ? 何? 思う間も無くベロッと先端を舐められ…それから全体をアイスでも舐めるようにべろべろ。
挙句にぱくりと咥えられてしまった。

【えっ? えぇ? えーーーっ! もしかして理玖の口の中?】
一瞬引いた熱の合間に恐る恐る目を開いて自分の股間を見ると、理玖が透太のものをしっかり口に納めて
べろべろ、ずるずると…舐めては吸って…挙句に、上手く唇を使って歯が当たらないようにして上下に扱く。
それは、手とは比べものにならない柔らかさと密着感で、嘗て体験したことも無い快感。
ぞわぞわと蠢いていたものが群れを無して中心に集まり、その更に奥から出口に向かって一機に押し寄せようとする。

「うわっ! やっ、止めろーー!! 駄目! でっ、出ちゃう…」 透太が叫ぶように言うと、
「○△×……▽ひ◇…」 と…理玖は言ったが、なんと言ったのか解からなかった。
それでも、咥えたものを離さない所を見ると 「いいよ、出して」 と言ったのだろう…と想像はついた…が。
このままの状態で出してしまったら、理玖の思い通りになる…そんな気がして何とか逃げようとするが、
しっかりと理玖に抱えられた腰は逃げるどころか、快感に捕らえられたままで引く事も叶わない。
それでも、理玖の口の中に射精するのだけは、どうしても嫌だと思った。

【い、嫌だ…理玖の口の中なんて…死んでも嫌だ】
透太は必死に耐え…下腹の辺りで両手をギュッと握り、出てくるものを止めようと我慢するのだが、
理玖の舌先で誘うように尿道口を責められ、奥にある熱を吸い出すように何度か上下されると、
理玖の動きを止めようとしたのか、それとも無意識に促したのか…下腹に置いた手が理玖の頭に行き髪を握った。
その途端、透太の全身が痙攣するかのように硬直し、仰け反ると。
「あっ…あぁぁ…あぁぁぁぁーーーー」
押し殺しきれない声が喉を割り、灼熱の塊が狭い道を押し広げ…飛び出した。

それから何度か小刻みに戦慄き、やがて弛緩するそれに合わせたように、肺も刻みに空気を取り込み乱れた息を整える。
そのあまりの気だるさに目を開くのもおっくうで、自分がTシャツだけはそのままに下半身だけ剥き出し。
そんな姿だという事に気を回す余裕も無く、目を閉じたまま初めて他者に与えられた快感の余韻に浸っていた。
だが、その剥き出しの股間で理玖が動いたのに気づくと、一瞬で我に返り…恐る恐る自分の股間に目をやる。
すると其処には、透太と目が合った途端唇を舐めながらニッと笑う理玖の顔があった。



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