ピジョンブラッドの赤      宮田学=上條日向


私はもうすぐ 30歳になる。
若者たちには、オジサンと呼ばれる世代に入ろうとしているが、
それでも私は 決して、その辺の中年サラリーマンと、同じにはならないだろう。

この国で、トップクラスの大学を卒業し、大企業に就職。
世間一般から見て、エリートと呼ばれる道を選ばずして歩いている。
27歳の若さで課長代理、そして先月課長になった。 美しい妻と、可愛い子供…。
183センチの身長とスポーツで鍛えた体、顔も人並み以上と自負している。

サラリーマンなら誰もが羨み、憧れるエリート。
そんな私が30歳になり、仕事に私生活にと、益々充実した日々を送り、
自分の人生に満足している…世間の人は、誰もがそう思っているだろう。
事実仕事にしても、バカな上司と無能な部下のフォローと尻拭い、そんな事もあるが、 
それすら完璧にこなす私の評価は、信頼に足る部下と尊敬する上司…になる。

何も不満はない。 私は同世代の男達と比べたら、何歩も先を歩いているのだから。
決して、追い越される事はない。
なのに、どうして…私はこんな処に毎晩足繁く通っているのだろう。
もう一月以上、家には真っ直ぐ帰っていない。 妻には、今面倒な仕事を抱え、遅くなると言ってある。
おそらく今頃は、子供を寝かしつけて、風呂にでも入っていることだろう。
着痩せするタイプの、ほっそり見える妻の身体が、
裸になると、思った以上に豊かな胸と、形よく丸い尻に私は満足していた。
 
子供を産んで、少し柔らかくなったラインを、妻は気にしていたが、
私は、それはそれで母親らしくて良い…と思っている。
だから 妻に不満が有る訳ではない。 それなのに私は、どうしてこんな処にいる。
カウンターに座っている客も 奥のテーブルも、前も後ろも、右も左も…
周りにいるのは男ばかりで、女の姿は一人として見当たらない。

「お兄さん 一人?」  隣の席に誰かが座った。
手にしたグラスを、コトリとカウンターの上に置き、その誰かは椅子を回転させて、
私のほうに身体を向けると 片肘を付いて私を見つめた。
「君は…一人なのか?」   私は、顔だけを彼に向けて訪ねる。
「うん…待ち合わせしたんだけど、急に用が出来たんだって」
まだ 二十歳前後ぐらいの若者は、そう言って視線を上に向けた。

大学生だろうか…形よくカットされた、明るめの色に染めた髪を、指で鍬ながら。
「約束なんて…守れないくらいなら、しなきゃいいのに…」   と、呟くように言う。
「恋人?」  私は、なぜかすんなりとその言葉を口にした。
「違う…と思う。 僕は、そう思いたいけど…あいつは、そんなふうには思っていない」
若者の答えに、私はどう言って良いのか判らず、
「…・・」 
薄くなったグラスの中の液体を口の中に流し込むと、時計に目をやった。 

若者は、私が何も言わないのを、気にするふうでも無く、
「お兄さん。 最近よく来ているよね。 誰か探しているの?」  そんな事を聞く。
その思いがけない言葉に…私は、少しだけ興味が湧き、
「なんで、そう思うのかな…」  若者に尋ねてみた。

「だって…いつも、一人で来て一人で帰って行くでしょう。
遊び相手を、探しているふうでもないから、誰かを探しているのかな…と思って」
若者はそう言うと、私の顔を覗き込むようにして笑った。
男にしては優しい顔立ちと、大きめの二重の目が、若者を幼く見せているが、
こんな所に出入りしているのだから、未成年ではないだろう。 
そんな事を思いながら、頭に浮かんだそれを口にした。

「君は…いくつなのだろう」  
「僕? 23」  
若者は、私の目の前に指を二本立て、それを三本に増やして言った。 
間接の細い、女の指のようだと思った。
「23…学生では無いのか」  私が言うと、若者は唇の両端をあげて、笑い。
「よく言われるけど、れっきとした社会人です。
お兄さんは? なんか、超かっこいいエリート…って感じだけど」
若者は、カウンターに頬杖を付いたまま、ちょっと首を傾げる仕草をする。

「そんな事もないよ。 それに、もうすぐ小父さんと呼ばれる年になる」  私は、笑ってそう言った。
「ふ〜ん そうは見えないけど。 でも、おにいさんは、こういう処が、めちゃくちゃ似合わないね。
陽の当たる場所で、女性に囲まれているのが似合っていそう」
若者にはっきりと、この場所は私には似合わない…そう言われ、もしかしたらそれは、
この店にいる、誰もが感じている事なのかも知れない…そんな気がした。
私自身も、なぜ、自分が此処に来るのかが、解らないのだから…。
誰が見ても、私とこの場所…は、違和感があるのだろう。 

「私には、似合わない…か」
「遊んだ事…ないの?」  若者の目が、悪戯っぽく見えた。
「遊ぶ…か。 君は、遊びで男と付き合えるのか? 私は、多分出来ないだろうな」 
それは本心だった。 遊びで相手にした女はいる。 言い寄って来る女も結構いた。
別に遊ぶつもりは無かった。 続くならそれでもいいし、駄目ならそれも然り・・。
その程度のものだったから…結局は遊びだったのだろう。
目の前のグラスは 更に色を薄くして…氷は、小さな欠片になっていた。

「じゃぁさ。 マジで、僕と付き合う?」  そう言った若者の瞳が、笑っていた。
私は、若者の後ろに座った若い客の、私と若者を一瞥した目が、何となく気になったが、
こんな所にいて、今更何を気にする…そう思い、その目を意識の外に外した。
そして…冗談めいた口調で、
「…やめておこう。 君の恋人に、刺されたくないからな…」  と、言うと…若者は、瞳から笑みを消し、
「あいつは 僕が誰と付き合おうが興味ないよ。 いっつも、僕からの一方通行で、
僕がひとり相撲しているだけ。 でも、そういうのって…疲れちゃうんだよね、。 けど…それも、もう終わり」  
若者の声が、語尾が…小さく震えて聞こえた。

「別れるのか…」
「うん…。 あいつ…就職の内定がとれたって言うからさ。
あいつさ、見かけによらず結構優秀らしくて、良い会社に就職できそうなんだ。 
それなのに、男と付き合っている事が判ったら…内定、取り消しになっちゃうかも知れないでしょう?
それに、その会社…結構、転勤とかもあるみたいだし」

「君が、そいつに付いて行けば、良いのではないのか?」  
私は、思っている事を、何気なく口にしてみた。 すると、若者はとんでもない…そんな顔で首を振ると、
「そんな事、できる訳ないでしょう。 男と付き纏っている事がばれたら、出世に響くし、
下手をしたら…。 それに…僕だって、仕事があるし…」  と、言った声には、何となく力が無かった。 
若者の言葉は、世間一般的に考えれば、そのとおりなのかも知れないが、
人が人を好きになる気持ちを、妨げる理由にはならないし、歯止めにもならない。
それならば…貫き通した者が、勝った者なのではないか…私は、そんな事を思って、

「私なら、本当に好きな相手は、有無を言わさず連れていく。
男と付き合っているぐらいで、私の評価が下がるような仕事はしていないからな。
だが…その人が、今の仕事を続けたいと言ったなら、迷わずその人を取る。 
何処で働こうが、私には、それなりの実績を残せる自信があるから、迷いなどない」
などと、大見得を切るような事を言ってしまったが、正直、自分もその場になれば迷うかもしれない。
今迄積み上げて来たものを、全て失うのだから、当然だろう…が、できる事なら、そうしたいと思った。 

 「貴方のような人に、愛されたら…幸せだよね。
なにもかも捨てて…貴方だけを信じて、迷わず飛び込んでいけるのに」
そう言って、微かな笑みを浮かべ、私に向けた若者の瞳は潤んでいるように見えた。 

「さっきから聞いてりゃ 何、勝手な事ばっか言ってんの。 お前等。
誰が興味ないって? 誰の一方通行だって?
お前さぁ、勝手な事ばっか、言ってんじゃねぇよ。 信じてねぇの、お前だろうが。
それになんだ? お前と付き合っていると出世できない? 自惚れんなよ。 
そんなもん関係ないに決まってんだろう。 出世出来ないのは、自分に力がないからだ。

俺は 自分の能力が無いのを、人のせいにする程腐ってないし、
それら全部承知で、お前と付き合っているんだぞ。 
そんな事も解んないで、一人で、うじうじ、ぐだぐだと黄昏てんじゃねぇよ。
一寸かっこいいオヤジ相手だと、すぐ甘ったれやがって。 しまいには張り倒すぞ。」
若者の後ろに座っていた若い男が、いきなり捲くし立て、 
若者の肩に手をかると、その身体を自分の方にむけると、その頭にこぶしを載せた。

「か! かずき。 なんで? 今日は忙しいって…」
「忙しいとは言ったが 会えないとは言ってないだろう。
あの後、何度連絡しても繋がんないし。 お前、携帯どうしたんだよ」
かずきと呼ばれた若い男が、やはり怒ったような口調で若者に聞く。 
だがその声は…意外にも、優しさに溢れているように思えた。

「あっ、そう言えば カバン入れっぱなし」
「ったくよう…お前みたいなドジは、俺が付いてなきゃ、どうしようもないだろう。
すぐに落ち込むし、泣くし…甘えたがる。
いつだって、自分の事より俺の事を先に考えて、誰より俺が大事で、俺だけを好きで、 
そのくせ…一番俺の事が信じられなくて…いつも不安で…。
ほんとバカだよ・・お前は。 でも、安心しろ。 俺の人生、お前にくれてやるから。 
お前の好きなようにして良い。 だから…もっと信じろよ…俺のこと」
そう言って、目の前の若者の頭を、くしゃくしゃと掻きまわした。
 
公衆の面前?で、堂々と男相手に愛の告白をする男に、私は呆れるよりも、むしろ清々しいものを感じた。
「か…かずき…」
「なんだよ、その顔は。 泣くんじゃねぇよ・・こんな処で」
かずき…と、呼ばれた若者は、人前も憚らず、恋人の若者を胸に抱き寄せると、私を、真っ直ぐに見つめ。 
そして…私にとも腕の中の若者にとも、判らない口調で言う。

「俺、○○商事の内定…蹴ったから」
「えっ ? なんで?」 
抱きしめられていた若者は、胸から顔を上げ相手を見つめているのに、 
かずきという男の視線は、私から逸らされることがなかった。
「当たり前だ。 入社して研修が済んだら、直ぐに転勤なんて、やってられるかよ。 
会社の都合で、あっちだ、こっちだって行かされんのなんか嫌だね。 だから…別の、勤め先を決めてきた。 
小さい会社だけど、業績は良いし、これから伸びる可能性があるから…面白い。
それに お前と一緒に居られる…・それが、一番面白い…そうだろう?
俺は…何処だろうが、それなりの働きはできる。 だよな…エリートのお兄さん」
男は、真っ直ぐに私を見つめたまま、そう言ってニッと笑った。

私に、真正面から挑んでくるような、その眼差しに…面白い青年だ…そんなふうに思い、
彼なら何処であろうと、しっかりとした働きをするだろう。
それに、愛する人を全力で守るだろう…そんな気がした。  
「そうだな。 価値観は人によってそれぞれ違うものだが、真の価値は自分の中にある。 
見失わなければ、他人がどう思おうと…幸せでいられる」
私が言うと、若者はニヤリと笑い。

「あんたに、そう言って貰えて、自分が選択した道に自信が持てた。
俺は、間違っていなかった…と、確信できた。 Thank You、おにいさん。
それと…こいつが、迷惑かけたんだったら、俺が謝る。 悪かった」  
そんな事を言って、頭を下げる。 その、意外なほどの好青年ぶりに、私は思わず笑みを浮かべ、
「別に、迷惑などしていない。 今日は、君たちに会えて、とても楽しかったよ」
お世辞や、口先だけではない、自分の気持ちを伝える。 すると、
「そう…良かった。 それじゃ、俺らは帰るけどさ、今度会う事があったら、一緒に一杯どうですか」
かずきという若者が言い。
「あぁ、良いね。  楽しみにしているよ」  と、私は答えた。

そして、二人は肩を寄せ合って店を出て行く。
これから、どこへ行くのか。 歩む道は、平坦ではないだろうに…と、思いながら、
それでも、あえてその道を選んだのは、共に歩きたいと思う相手に、巡り合ったと言う事なのだろう。
叶う事なら、彼等の歩む道が…幸せであれと思ってしまうのは、 
私が彼等を…少しだけ、羨ましいと思ったせいなのかも知れない…そんなふうにも思えた

彼らの帰った後、私も店を出て…足早に、大きな通りへと急ぐ。
深夜の2時だというのに、見るからに未成年と思える若者達が、あちこちに屯いながら、
意味も無く笑い声をあげ、体を動かし続けている。
まるで、何かを燃やしながら…自身の生命すらも…吐き出すように。
眠らない街は、それら全てを受け止め、残滓に変え…朝の光に霧散させる。
そしてまた…新しい彼らを迎える。 彼等達は、その全てを、吐き出し終えた時。 
中味のない、抜け殻のような大人になり…朝の光に、自分の残骸を見るのだろうか。


一月以上も前だが、図らずも取引先の人間達と呑む機会があった。
その日専務は、私の課長昇進の祝いと称して、食事の席を設けてくれた。
まだ 正式に辞令は下りていないものの、専務自らの誘いとなれば、
私の課長昇進は、確定と言っているようなものである。
私は、有難くその誘いを受け、専務の行きつけだという料亭で、食事を御馳走になった。

本当は、そんなもの 私にはなんの意味もなかったが、仕事だと思えば苦にはならない。
仕事で、美味いものが食える…ただそれだけの事。
食事も粗方済んだ頃になって、私は手洗いに行くため席を外した。
そこで 取引先で、何度か顔を合わせた事のある、津村なにがしと鉢合わせした。

若干目端の利きすぎるこの男と、顔を合わせたのに、私は幾分鬱陶しさを感じたが、
それでも、その場は…一言二事言葉を交わし別れた…が。 
座敷に戻って間もなく、やはり…津村が上司を伴って現れ…私は、密かに腹の中で舌打ちしたが、
結局は彼等と一緒に、場を改めた酒の席に 同行する羽目になってしまった。
あの時津村が、なぜ私と会った事を上司に告げたのか、解らなかったが。
それが、私の人生を大きく変えることになろうとは…想像だにせず。
私は、若干苦々しく思いながらも、彼らと一緒にタクシーに乗り込んだ。

高級クラブと銘うっているだけあって、女性たちもそれなりに美しく、
何より必要以上に、媚を売る素振りを見せない。 適度に話し上手で、適度に聞き上手…。
そして、男たちの話しが始まると、決して、その間に入って来る事もない。
そうところは、流石に教育?が行き届いているな…などと、思いながら、
いつもなら、さほど気にもならないはずの、隣の席に座った女性の、香水の匂いに、頭痛を感じ始めた頃、

「オイ! 津村君。 あれから、ひなたとは連絡がとれたのか?」
彼等の間で交わされた一言で、世界がぐるりと回転するような眩暈を覚えた。

ひなた! ひなた・・とは。
自分の声が、震えてしまうのでは…と思う程、心臓が早鐘のように鳴る。 その音の流れを、全身で感じながら、
「あ・・あの…ひなた…と、いうのは?」 
津村の肩口に顔を寄せて、声を潜めるようにして聞いた。
すると津村の顔に、一瞬戸惑いの色が浮かび…それから、苦笑いが浮かび。
私と同じように、声を潜めるようにして言った。

「えっ? あ・・ああ…いえね。 
見ず知らずの男なのですが…部長が、その…えらく気に入ってしまいまして。
実は、此処だけの話ですが、部長は、まぁ、両刀づかいと云うやつ、らしくて」
その時だけ、津村の顔に下卑たような笑みが浮かんだ。 私は、それを意識の外に外し、
「つまり…男もいけると」  やはり、潜めた声で聞く。

「はぁ…まぁ そう言う事になりますか。 あくまでも、この場の話と言う事でお願いします」
そう言うと津村は、今度は盗み見るような目つきで私を見た。
そんな津村の様子から、この男は上司の下の世話までしているのか…などと思ってしまったが、
目端の利く部下というのは、こういう事も含めて、上司にはとっては、重宝な存在なのかも知れない。
などと、ある意味感心しながら。

「私は、人の趣味匙好を、とやかくいうつもりはありませんし、興味もありません。
心配なさらなくて良いですよ。 ただ、ちょっと…。
部長さんほどの方の目を射止める男性とは、一体どんな方なのかと思っただけです」
私はあくまでも、津村の上司が見初めた男…それに、興味がある、そんな口ぶり言う。
事実、ひなた…の言葉が無ければ、私は彼らの話に、何の興味も示さなかっただろう。
だが…耳にしてしまった今は、少しでもその男の事を聞きたいと思った。

津村は 私が他言しないと確信したのか、それとも、私もただの変態男と思ったのか、
「いや・・それがね・・」 
半分は、野次馬根性からなのだろうが、思った以上に詳しく話してくれた。
その、ひなた…と、いう男は、名前も、それしか判らず、何処の誰かも判らないのだと言う。
その男に出会ったのは、誰かの記念セレモニーを兼ねたパーティー会場で、
着飾った客や、派遣のコンパニオン ウェーター が、入り混じっている中で、その男は、女性客の相手をしていた。
物憂いというか、気だるいというか。 とにかく、奇妙な雰囲気を漂わせている男だったという。
背は高くもなく、かといって低くもなく、ほっそりとした身体に、仕立てのいい背広を着て、 
あまり話をするでもなく、ただ 相手に 微笑む顔がとても綺麗だったと…。

「多分…あれは、ホストでしょうね。 それに、部長が目を留めましてね。
一度食事にでも…なんて言い出したんです。
サラリーマンの、悲しい性で…僕は、彼が会場の外へ出たのを見て、後を追いましたよ。
すると、廊下の隅の方で、話している声が聞こえました。 
その時、ひなたです…って言っていましたから…おそらく、彼の姓でしょうね。
 
それから、店に来てくれるように言いました。 
確か、ハルとか猫とか…そんなふうな事も言っていたような気がしますが、よくは聞こえませんでした。
僕は、タバコを吸っているような振りをしながら、彼が話し終わるのを待って、声をかけました。
上司が是非一度、食事にお誘いしたいと言っているがどうか…と。

彼は、一瞬驚いたような顔をして僕を見て…それから、ニッコリと笑うと。
私と、寝たいということですか? って…直球ですよ、直球…僕は焦ってしまって。 
いやぁ 本当にあるんですね、言葉が出ないって事が。
そしたら、彼が言ったんです。 「私を、捕えられたら…良いですよ」 って。
あの時の、彼の顔を…僕は今でも はっきり覚えていますよ。
なんて言うかな…何とも言えない…そんな感じ…・ですね」

津村は そう言うと そこに何かを見ているような目をして、宙を見つめていた。
私はその時思った。 上条…だ。 間違いない…上條 日向…だ。


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