11. 兄・弟

 -受難-

郁ちゃん…僕ね、りんごのパンケーキも作れるようになったんだよ。今度はパイに挑戦してみようと思っているんだ。
日本に帰ったら郁ちゃんにも食べさせてあげるから、楽しみにしていてね

郁ちゃん、大学はもう決まったの? それとも、まだ考え中?
僕も、いろんな事頑張っているよ。でも…もっともっと頑張るからね…大丈夫だよ。

郁ちゃん…今日も朝から雨なんだよ。こっちは日本より雨が多くて…ちょっとだけ憂鬱になります。
でも大丈夫だからね。僕はとても元気です。

郁ちゃん、元気ですか? お勉強頑張っている?
僕も…パイ、上手に焼けるようになったよ。早く郁ちゃんにも食べて欲しいな。

郁ちゃん…メール届いている? ごめんね…ちょっとだけ心配しちゃった。
それじゃ…またメールするね。

郁ちゃん…僕は毎日…元気………で…

大丈夫…だよ……さみしくなんか…な…い……

何度送っても、一向に返事の来ないメールを今日も送る。
ポタポタと落ちる涙は、樹理の膝を濡らすだけで、画面にはその一滴すら映し出すことはなかった。
それでもそのメールだけが郁海と繋がる一本の糸、自分が兄でいられる為の樹理にとって、

週に一二度でも二年以上も通っていれば、植物園の職員や学生の何人かとも挨拶程度の会話を交わすようになる。
そして、その職員の一人ジェームス・コンラットが、樹理の描く絵をとても気に入っていた。
それというのも、彼の小さな娘はとても花の好きな娘だったが、自由に外を出歩けるほどに健康ではなかった。
だから彼は、一日のほとんどをベッドの上で過ごす娘の為に、自分の勤める植物園に咲く沢山の花を写真に写した。
そして、その写真を見た時の娘の楽しそうな顔を見るのが、彼にとって一番の幸せ…といってよいほどだった。

そんな彼が、ある時植物園でスケッチをしている樹理の画を目にした。
眼の前に咲く色鮮やかな花とは程遠いただの線画。それなのになぜか、その画から目を逸らす事が出来なかった。
それからは、樹理の姿を見かけると何気にスケッチブックを覗き見るようになり…そして思った。
樹理の画の中には今まで自分が映した写真には映し出せなかった何かが潜んでいる…命が息づいている…と。
だから、どうしても樹理の描いた花を娘に見せてやりたいと思った。娘なら…この花と話が出来るのでは…。
そんな突拍子も無い考えが頭に浮かび…それは衝動となり、自分でも思いもしない言葉が彼の口から飛び出した。
「君、その絵を譲ってくれないか! 金なら払う。いくらだ!」

そしてその勢い込んだ声と口調は樹理に戸惑い以上の驚きを与えた。突然目の前に迫った自分の倍近くもある大男に、
樹理は恐れにも似た色を浮べた瞳で見上げ、スケッチブックを峰に抱きしめたまま、
「えっ…あ、あの…僕は、そんなこと…」
口籠るように言うとじりじりと後退さりながら、今にもその場から駆け出して行きそうにも見えた。
だから、ジェームズは慌てたように…今度は切々と樹理の画を欲した理由と病床の娘への想いを語り始めた。

「ジェームズさんの御嬢さんに僕の画を……。有難うございます。僕の画で御嬢さんが少しでも元気になれるならとても嬉しい。
だから、少しだけ待ってもらえますか? 次に来るときにはきちんと仕上げてきます」
樹理はそう言い、一週間後仕上げた絵をジェームズに渡した。勿論樹理の頭の中には、お金を貰うなどという考えは微塵も無く、
自分の画を喜んでくれる人が居る…その事がただ嬉しかった。
そして樹理がその次に植物園を訪れた時、まるで樹理を待っていたかのようにジェームズが駆け寄り、
娘が樹理の画をとても喜んだことを伝え、御礼だと言って樹理の画を抱えた娘アリーシャの写真とメモを樹理に手渡した。

写真の中で笑うアリーシャは、透けるようなプラチナブロンドの髪と淡青色の瞳のとても可愛らしい女の子だったが、
その白金の髪と同じように儚く透明な彼女の笑顔は、樹理の胸を言いようのない痛みで締め付けた。
そして、押し花をあしらった便箋には、
To the dear painter of mine 貴方の素敵な画が私の小さな世界を広げてくれました。ありがとう…とても感謝しています。
叶うなら、貴方の画がもっと沢山見られるように…眠る前に祈る願いが一つ増えてしまいました…とあった。

そんな事があり、樹理がアリーシャの為に描いてジェームズに渡した画は結構な数になっていた。
そして今では、ジェームズ親娘は樹理の画の大のフアン?と言っても過言では無かった。
それに…もう直ぐアマゾンリリーの花が咲くと聞き。樹理はその花の画をアリーシャに送りたいと思っていた。
だから、郁海の事を思うと沈みがちになる気持ちを奮い立たせ、植物園に通い続けた。


「ねぇ、君がジュリ?」
東館に行く手前の通路で声をかけられ、振り向くと其処には見知らぬ少年が笑いながら立っていた。
目深に被った帽子から覗く褐色を帯びた癖のある赤い髪。それとグレーの瞳とその下に少しだけあるそばかす。
それが少年の笑顔を、大学の学生にしては何処となく幼そうにも見せて。
もしかしたら一般の観覧者かも知れない…そう思いながら、自分の名前を知っている事を不審にも思った。
そのせいもあって、樹理は少しだけ不安そうな顔で、窺うように聞く。

「はい、そうですが…貴方は?」
すると少年はちょっと考えるような表情をしたが…口から出た声には迷いが無かった。
「僕は…ニール・ハブスブルグの使いだけど」
それは…樹理にとって大切な友達一号の名前。
そしてその名前で、樹理の僅かばかりの警戒心は吹き飛んでしまい、見も知らぬ少年に親しみさえ覚えた。
「そうか、君はニールのお友達なんだ。それで、ニールに頼まれたんだね」
「そう…。君は、此処でニールと会う約束しているんだよね」
少年のその問いかけに、今度は樹理がちょっと首を傾げる仕草をした。

確かにニールとは植物園で会う事が多かったが、特に約束をしているという訳でもなかった。
樹理がほぼ決まった日に此処に来るので、それに合わせてニールも植物園に顔を出し…話をして別れ時もあれば、
その後一緒にお茶をしたり、散歩をしたりすることもあった。
そんな感じだったから、樹理にしてみれば改めて約束したつもりはなかった…が、
いつも別れる時には次に来る日を聞かれるので、約束と言われればそうなのかも知れない…とも思った。

「うん…でも…」
何となく曖昧な返事と頼りなさそうな表情を見せる樹理に対し、少年はそんな事には気に留める様子も見せず、
「ニールが、今日は別の処で待っているって…。俺、案内するように言われているから、一緒に来てよ」
そう言うと、やおら樹理の手首を掴み歩き出した。それはまるで、樹理に抵抗する暇もあたえない素早い動きで…。
案の定、樹理は何がどうなっているのか判らないまま、少年に引きずられる格好で歩き出す。

それでも、余りにも強引と言える態度に何となく違和感を覚え、背後から少年に問いかけた。
「ねぇ…別の所って? ニールは大学にいないの?」
すると少年は、樹理に顔も向けず面倒くさそうに答えた。
「今日は、講師が休みで休講になったんだって。だから、もう大学にはいない」
「そうなんだ…。でも、どうして急に他の所で会うなんて言うのかな」
「さぁ…会ったら本人に聞けば…」
そう言うと少年は小さく舌打ちをし、その声はとても不機嫌そうに聞こえた。

最初に会った時とは明らかに違う少年の様子に、樹理の胸中には不信と不安が芽生え…それが徐々に広がっていく。
それでも何か言うと怒鳴られそうな気がして…。だから、黙って引かれるまま少年の後に続くしかなかった。
それに、少年は幼そうに見えたが背は樹理よりも高く、力もあるのかつかまれた手首は簡単に振り切れそうもなかった。
そのうえ変に捩じられているので、引っ張られる度に腕全体までが痛くてかなわない。だからとうとうたまりかねて、

「ねぇ、お願いだからこの手放して…腕が痛くて痺れてきちゃうよ」 樹理が言うと、少年はまたも舌打ちをすると
「逃げるなよ…」 そう言って、樹理をじろりと睨み、掴んでいた手を離した。
流石にその頃になると、僅かに残っていた親しみもすっかり消え去ってしまい、不安は恐怖に変ろうとしていた。
【この人怖い…】 そう思いながら、
【でも、ニールのお使いだって言うし…もしニールが待っていたら…】 そんな、甘い考えもあり、
本当は逃げたいと思いながら、逃げ出すのも悪いような気がして、樹理はそれからも少年の後に続いた。


樹理がいつも植物園に行く為に通る道とは、反対にあたる学生街の外れに来ると、
少年はネッカー川沿いに建っている小さな建物に向かった。その建物には地下に続く狭く急な階段があり。
それを下りると、正面に大きな古びたドアがあった。そして少年は、何の躊躇いも無くそのドアを開き、
中へと入り込むと樹理にも入るよう促す。其処は表からは地下になっているが、川に面した斜面に建っているため、
中には普通の建物のように窓もあり、外の明りが充分過ぎるほど入り込んで、歩くのに不自由する事はなかった。

ただ、使われなくなって大分経つらしく、窓はガラスが何枚か割れていて、其処から風や雨が入り込むのだろう、
汚れて腐りかけた床や、しみだらけの壁が所々崩れているのが何となく不気味に思えた。
だから…ニールがこんな所で待っているはずが無い。少年の言葉はやはり嘘だったのでは…そぅ思いながら、
さっき見せた少年の眼が気になり、樹理は少年に付いて来た事を少しだけ後悔し始めていた。
だからと言って、今更逃げても直ぐに掴まってしまいそうだし、それより少年の言った言葉を確かめたいと思った。

「ねぇ…ニールは本当に此処に来いって言ったの?」
樹理にしてみてば怒鳴られるのを覚悟して尋ねたつもりだったが、自分の耳に聞こえる声が震えているような気がした。
そしてその途端、少年は今入って来た壊れかけたドアをバタンと閉め…いきなり大きな声で笑い出した。
「お前ってさ、純真なふりして本当はバカなんじゃないの。ニールの名前に釣られ、のこのこ付いて来るなんてさ。
ちっこいガキならともかく、普通の人間は見知らぬ人間なんかに、一人で付いて行ったりしないぞ」
少年は如何にも嘲るように言いながら、樹理を見る目に憎しみを隠そうともしない。
そして樹理は、怒鳴られるよりその目を怖い…と思った。

「やっぱり…ニールが待っていると言ったのは嘘だったんだ」
「やっぱり? そうか…嘘かも知れないと思ったのに、ニールに会いたくて付いて来たっていうのか。
お前、益々気に入らない。少しぐらい可愛い顔をしているからって、ニールを誑かすなんて絶対に許せない。
お前が、ニールの周りにいるだけで目障りなんだよ!」
少年は、今度こそ本当に憎々しげに樹理を睨むと、吐き捨てるように言った。

確かに郁海も時々怒鳴ったし、邪険な態度をした時もある。それでも、郁海の目に憎しみや敵意を感じた事は無かった。
だが豹変した少年の態度や言葉には…明らかに樹理に向けた憎しみが潜んでいる。
そして、その理由も判らない樹理は、正直言って、驚きながらも少年の言っている事が理解出来ないでいた。
なぜなら、こんな言葉を浴びせられたのは生まれて初めての事で、自分の知らない所で人の憎しみを買う。
そんな経験の無かった樹理は、どうして少年が、其処まで敵意をむき出しにするのか解らなかった。

「どうしてそんな事を言うの? 僕は何も…」
「お前、本当に解らないの? やっぱりお前…本当にバカなんだ。いいか、良く聞けよ。
ニールは、立派な貴族の家の御子息で、ご両親もニールに期待されているんだぞ。大学を卒業したらお屋敷に戻って、
伝統ある家を守って行く貴族様なんだ。それに、お父さんの経営している会社も継がなくてはならない。
お前なんかを相手にしちゃ、いけない人なんだ。変な奴が周りにいたら、ニールにとってマイナスだし迷惑をかける。
だから、お前にはニールから手を引いてもらう。大体お前みたいな訳の解らない奴が、ニールと付き合うなんて…間違ってる」

少年は、思ったよりはっきりと解りやすく? 樹理に対する敵意の理由とやらを説明した。
だがその理由は全くの見当違いで…本当なら、少年がニールと樹理の関係を誤解しているらしい事を、
はっきり否定すれば良いのだろうが、樹理は、初めて聞くニールの背景に素直に驚きの表情を見せた。
それと…少年の言った訳の解らない奴と言うのが、ひどく気になり…嫌だった。
だから、自分は決して得体の知れない者では無く、永沢樹理という一人の人間だと言う事を少年に解って欲しい。
その事の方が樹理にとっては、少年の誤解を解くより重大な事…のように思えた。

「そうなんだ。ニールはそんな立派なお家の人だったんだ。ニールは何にも言ってくれないから…僕、全然気付かなかった。
本当に何も知らなくて…ごめんなさい。でも…僕は変な奴でも無いし、訳の解らない奴でもないよ。
君の言うように、僕は事故にあって知能の成長は難しくなったけど…一生懸命頑張っているんだ。
いろんな事に挑戦して、少しずつ出来るようになって…いつかは追いつくように…頑張っているんだ」
樹理は、障害の事を含めて自分を解って欲しい…そう思ったのだが、少年は、意外な事を聞いたような顔をすると、
それから、何となく気まずそうな顔と口ぶりで…障害の事を聞いた。

「お前…事故に合ったのか…頭に怪我でもしたのか?」
「うん、子供時にね。銃で頭を撃たれたの。だから…先生には死ぬって言われ、本当は助からない筈だった。
でも僕は、郁ちゃんを守らなくちゃいけないから、死んだり出来ないんだ。だって、妹が生まれる時郁ちゃんと約束したんだ。
僕がずっと郁ちゃんを護るから、お母さんは妹に貸してあげようね…って。だから…僕が郁ちゃんを護らなくちゃ」
「郁ちゃん? 誰? それ…」

「日本にいる僕の弟。今は僕よりずっと大きくて、カッコ良くて…それに何でも出来るんだよ。凄いでしょ。
時々怒ったりもするけど…本当はとっても優しいって判っているから…郁ちゃんの事大好きなんだ、僕。
でも…どうしてか、全然お返事をくれなくなった。もう僕の事、忘れたのかな…要らなくなったのかな」
郁海の事を話しているうちに、全然返事の来ないメールの事を思い出し…そしたら急に悲しくなってしまい。
樹理の目からは、ぽろぽろと大粒の涙が零れ落ちた。それを見た少年は、慌ててポケットから薄汚れたハンカチを取り出し
「……泣くなよ…」 そう言って樹理に渡した。

ハンカチを受け取った樹理が、そのハンカチで涙を拭いているのを複雑な表情で見ていた少年は、
大げさに溜息を吐くとその場に腰を下ろし。それを見た樹理も、少年に寄り添うように並んで埃だらけの床に座る。
普通なら、こういう状況の時は、出来るだけ離れようとするのが当たり前なのだろう…が。
そうではない樹理の行動は、少年にとって意外と言うより驚きに近いものとして目に映った。
そのせいか、少しだけ樹理を見る目が穏やかになって…今度は心配そうに、並んで座っている樹理の様子を窺う。

樹理の涙は止まっていたが、それでも膝に顔を乗せて目を押さえたままで…少年はその姿を見ながら、
なぜニールが、この樹理という青年にあんなに拘るのかが、何となく解るような気がした。
普通悲しいからと言って男が、敵意を持っている人間の前でぽろぽろ涙を零すなんて事はあまり見た事が無い。
それなのに…弟が返事をくれないと言って泣く。そしてそれが、可笑しく見えないのが不思議な気がした。
そして、樹理と出会ってまだそんなに経っていないのに、自分の中にあったはずの悪意がいつの間にか消えてしまい。
気持が和やかになっているのも不思議な気がした。

それって…樹理は人の心を純化してくれるって事? 黒髪の天使…っているのかな…等と、少年はそんな事を思いながら。
「なぁ、ジュリって何歳なの?」
聞いた少年の声は、さっきまでと違い優しい色に変わっていた。
そして、少年の問いかけに、顔を上げて少年に向けた樹理の瞳はやはり少しだけ潤んでいたが、
「え? 僕の年?」
答えた声は何処となく嬉しそうにも聞こえた。だから、少年は何気ない様子で話を続ける。
「俺と同じくらいかな」
「君と? 僕は二十一になったばかりけど…君も同じなの?」
何処か期待を込めたような樹理の問いかけに、少年は開いた口が塞がらないと言った顔で、樹理の顔を見つめた。

「……二十一……」
「えっ! そうなの?」
樹理が少年の呟きを自分の問いの答えと思ったのか、念を押すように更に聞く。すると少年は、ぶっきらぼうに、
「俺は…十七…」
それだけ言うとあまり面白くもなさそうな顔をして横を向き、その反対に樹理の目は輝いたように見えた。
「そっか…郁ちゃんより年下なんだ。だったら、僕のほうがお兄ちゃんだね」
そしてその時だけは幾分得意げな顔も、やはり年齢より悠に幼く見えて、どう見ても二十一とは思えなかった。
だから少年は、【二十一でも、俺より下にしか見えないよ】 そう言いたいと思ったが、それを口にする事はしなかった。

「…………」
「僕の脳は所々死んでいるから、十歳の時からあまり成長していないんだ。
あの時死んでしまった部分を補えるように頑張っているけど…やはり死んだ部分は死んだままなんだね。
だから…身体は大きくなっても、頭はあの日に止まったままで…本当に少ししか前に進めない。
郁ちゃんが僕を追い越しても、僕は郁ちゃんと並ぶ事も、追いかけることも出来ない。
それでも郁ちゃんが大好きだから、郁ちゃんを護りたいから…郁ちゃんのお兄ちゃんでいたかったけど…もう無理みたい。
だって…郁ちゃんは大きくなったから…自分より小さいお兄ちゃんなんて、要らなくなってしまったんだ」
言いながら、樹理の眼から止まっていた涙が溢れ出す。そして少年は…樹理の肩に腕を回しそっと抱きしめた。


「そんなに好きなんだ…弟の事」
「うん、大好き…郁ちゃんがいれば寂しくない、怖くない、悲しくない。
でも…郁ちゃんがいないと寂しくて泣きたくなる…会いたくて、泣きたくなるんだ」

「そうなんだ…俺も大好きな人がいたから…樹理の気持ち良く解るよ。本当に大好きなのに…会えないって、悲しいよ。
だから、いつもその人の事を考える。すると益々会いたくなって声が聞きたくなって…泣きたくなる」
「そうだよね…大好きな人と一緒にいられないなんて、悲しいよね」
「うん…悲しい…」
恋人同士のようにぴったりと寄り添い、まるで身の上話でもしているように互いの心情を語り合っていると、
自分達がなぜ此処に来たのかもすっかり忘れて、妙な友達感情が芽生えてくるから不思議だった





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