「さて、困った。お前は、生きている間に、何一つ人の為になる事をして来なかったようだな。 これでは、とても上に行かせる事は出来ない。しかたが無いから、諦めて下に行くか? それとも、もう一度チャンスを与えてもらい、何か一つでも良い事をして来るか…どうする?」 惚けたような爺が、俺の顔をみて言った。 「お前は、優しいな。お前にそう言われると、本当にあいつに言われているような気がする」 そう言って俺を見る大崎の目が優しい。そうだった…大崎はいつもこんな目で俺を見ていたのに 俺は、一度だってその事実を、正面から見ようとはしなかった。いつだって変な敵対心でむきになって…。 素直に、大崎を見ていれば……声を聞いていれば……死んでから気づいても遅いのに。 それでも今は、この目と真っ直ぐ向き合いたい…俺はそう思った。 死んでから初めて知った、生きていた時には見えず気付かなかった想い。そして、一度死んだ少年が最後に願った事は… |